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治療が難しい症例について

①若年者で股関節症が進行したものに対しての回転骨きり術

スライドは26歳で当院を初診した患者さんです。 イタリアへ旅行に行きたいが股関節が痛いので病院に来たとのことでした。
X線写真が示しますように、関節裂隙はもう狭く、高年齢であれば人工股関節の適応になるところでした。しかし26歳という年齢を考えるとどうしてもTHRを躊躇し、RAOにチャレンジしました。幸いに術後のX線写真では、見事に股関節裂隙は開き、股関節症の進行は止まっています。疼痛からも開放されています。



このスライドの女性も少し特殊ですが、関節症は進行しており、 本来ならTHRの適応と思います。しかしながら何とかTHRを避けたいというので、RAOを行いました。 結果として関節裂隙は拡大し、疼痛も消失しました。
この二つの症例はあくまでも特殊なもので、常にRAOが成功するものではありません。
こういう手術が成功するわずかに残された可能性としては、股関節症が進行していても、股関節を外転といって外に開く運動がスムーズに可能で運動制限がない場合に限られると考えています。

②過去に大腿骨骨切り術を受けている股関節症に対するTHR

このスライドの男性が当院に受信してきた時には、末期股関節症の状況でした。 この患者さんの問題点は、過去に大腿骨が骨切りされ、その時に使われた金属プレートをとめたスクリューが折れて骨の中に残っていることで、強い痛みを持ったまま放置されていました。THRを行うにあたっては、そのままでは人工関節の大腿骨側のステムが入らないので、こういう場合には、手術のときに大腿骨を楔型の骨を切除して、もう一度普通の大腿骨の形に戻るように組み立てるようにして大腿ステムを打ち込むという特殊で複雑なテクニックを使います。3本のワイヤーは打ち込むときに大腿骨が割れないように予防として巻いたものです。微妙なひび割れは手術中にわからないこともあるので、そのまま残すようにしています。術後の写真ではワイヤー以外は普通のTHRと変わりありません。

このスライドは赤ちゃんの頃股関節が完全に脱臼をしていて、跛行をきたしていた場合、将来の股関節痛の進行を止めるために、シャンツという手術をすることがありました。この手術は大腿骨の近位部で外反という骨切りをして、大腿骨で体重を支えさせようと考えられた方法です。しかしながら、やはり高齢になるにつれて股関節痛が増して、最近では再度痛みをとる手術を望まれる患者さんがいます。




スライドは両方の手術を終えた写真です。もともと体重のかかっていなかった場所には骨移植をして骨のかぶりを良くして臼蓋のカップを取り付けています。大腿側は前の症例と同じように大腿骨近位部で骨切りし、大腿骨の中間の骨を達磨落としにして切除し、大腿骨の形を矯正して、大腿ステムを串刺しにして手術しています。術後は非常に歩きやすく疼痛も消えて患者さんも非常に満足していただいています。



③感染したTHR後の再建術

スライドの患者さんは、人工股関節を他の病院で受け、その後にゆるみを生じて、再度人工股関節の手術を受けましたが、その後に感染して、それを抜去する治療を受けていました。私のクリニックに来たときには、人工股関節が抜去はされていましたが、それをとめていた骨セメントは骨の中に残っており、臼蓋側も骨が削れていて人工関節を受ける骨がほとんどありませんでした。
このような場合でも冷凍して保存してあった骨を数個使って一つ一つ股関節を再建しました。術後7年を越えて、移植骨は完全に生着してX線上の変化は全くありません。臨床的には腰椎の手術を3回、反対側も2回のTHRを受けており、疼痛が続いていますが、杖を使っての歩行は可能になっています。

④関節固定された後のTHR

スライドの患者さんは30年前に股関節固定術という手術を受けていて、股関節の痛みは消失していましたが、関節が動かないこと、腰痛に悩まされていたこと、反対側の股関節が末期関節症になったことでTHRを行ったことから、何とか動く関節にしてほしいと望まれました。そこで、関節固定された部分を一度切り離し、THRを行いました。使われていなかった筋肉も十分活動し、股関節も約90度まで屈曲可能になり、患者さんには本当に喜んでいただいています。